日記 1
「 My room mate called Yes!」

“ ねえ、昨日又何十頭ものドルフィンにあったんだけど、昨日は特にすごかったよ、 生まれたばかりの赤ちゃんが、まだヘソの緒がついたまんまで、母イルカが自分の手 びれの上に赤ん坊を乗せて僕に見せるんだ” 私のルームメートで、この家の設計者 でもあるイエスがキッチンでランチを作りに行った私に向かって昨日の海での出来事 を話してくれた。彼はカヤックが趣味で、毎週末、山側のこの家からカヤックをつん で海へ出かけるが、イルカや鯨との遭遇が常にある幸運に恵まれているらしい、前回 は鯨と出会ってカヤックの櫓が彼らにぶつかって折れてしまったのを楽しそうに私に 見せてくれた。とても強く彼らの愛情を感じるという。
“生まれたばかりのイルカってどの位の大きさなの?”
“ちょうどこれくらいかな”彼は私が持っていた小ぶりのまな板(25センチから3 0センチぐらい)を指差した。昨日はイルカにつかまって泳いだという。私のすんで いる家は完全菜食主義者だけが住んでいて、もちろん魚は御法度だ、 ミルク、チー ズもたべないという。私は肉は食べないが、魚は嫌いではない、でもここに住むとき めたときに、この家のルールをちゃんと聞かされてすべて了承して入居したので私も 家では野菜だけだ、かつお節も使えないので友達にあげてしまった。“ 死んだ動物 はこの家には持ち込まないでほしい”いわれてみれば魚も動物なのだ。永谷園の鮭茶 づけも買うのを止めて野沢菜茶づけにした。その分とても清潔でハエも来ない。ゴキ ブリも見ない。私も含めて7人の人間が2階建ての一軒家に住んでいる。それも2階 には女の私と男が3人。私がこの家に住むことを決めた第一番の理由はバスルームを 見てだった。その前に見に行った家のバスルームが異常に汚いせいもあってか、この 家のバスルームを一目見て その清潔さにほっとしてしまった。私はここマウイ島に 来てベジタリアンならぬフルタリアン(果物食主義者)の存在を知ったが 私のルー ムメートたちも果物摂取量が非常に多い。まあ庭にはバナナ、パパイヤ、リリコイ (果物時計草、パッションとも言う)ココナッツがなり、トロピカルフルーツが身近 にあるゆえんだと思うが、私も最近食に対する観念がだいぶかわってきたと我ながら 思う。朝は果物を食べるようになった。日本にいたころ果物を食べる習慣を持ってい なかった私はどちらかと言うと果物嫌いだった。それが朝はパパイヤとバナナがおい しいと思うようになった。そのおかげなのだろう、便秘性がなおってしまった。
イエスは熱をとおす物をあまり食べたがらない。ハワイ特産のマカデミアンナッツも 一晩、生のナッツを水につけてそのまま食べている。水に浸けると皮がはがれやすく なり中々おいしかったのをおぼえている。彼は自分で野菜も作っていて私が知ってい るマウイの知人の中で一番新鮮で生き生きとした野菜を毎日食べている人の一人だ。
穏やかでシンプルで、それでいてガールフレンドの話をするときには少年のように目 をキラキラさせる。そんなイエスだからこそイルカたちがこぞって彼と戯れる機会を 持つのかも知れない。


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