87.  裁判員制度はいらない

 最高裁、検察庁、日弁連執行部という司法権力によって準備されてきた裁判員制度は、多くの国民の反対の声を無視して裁判を強行実施して4ヶ月、早くも問題が噴出し、マスコミの過熱、翼賛報道の陰で、全国的な反対運動が盛り上がっている。
 マスコミの公式発表では裁判員制度の出頭率は8~9割とされているが、これはゴマカシである。最高裁は昨年11月、全国29万5000人に「候補者通信」を送ったところ、約6割の17万5000人が無視、返送のあった12万人のうち、老人、病人、議員、職員、弁護士、前科者など6万人が資格なし、残った約6万人は断りきれない人と、お上と一緒に裁いてみ たいという「奇特なお方」だった。
 裁判員裁判では公判前の整理手続きで、決められたスケジュールに従って、数日間で一丁上がり式に片付けられるため、真実解明、誤判の防止を使命とする刑事裁判が、パフォーマンス重視のワイドショー化してしまった。
 そのため審議を経験した裁判員の中には、肉体的、精神的なストレスに苦しみ、おまけにそれを口外したら「守秘義務」違反で、懲役や罰金に処せられるという重圧を生涯背負わされるのである。
 かくて「絶対やりたくない」「裁判員制度に反対」という人たちが続出した。裁判員法では「父母の葬儀なら欠席しても良いが、祖父母ならダメ」と厳格に欠格事由を定めている。にも関らず、裁判所は「無理に」とは言わない程度にご都合主義なのだ。
 しかしマスコミは裁判員制度に対する関心の高まりを演出するため、8月3日、東京地裁での最初の裁判員裁判では、傍聴希望者2382人の長蛇の列が並んだと報じたが、実は大半がマスコミが動員したサクラだった。
 ちなみに裁判員裁判ではなかったが、同じ東京地裁で10月26日、覚醒剤事件の酒井法子被告の初公判では、傍聴席20に対して6615人、約330倍、過去最高というが、TBS、朝日などは社員に対して抽選に並ぶよう要請するなど、ほとんどがメディアの動員だったとか。まさに自作自演である。
 覚醒剤は既に裁判員裁判で裁かれたが、大麻はまだ裁かれていない。もし大麻が麻薬ではなく医療品であることを理解している人物が裁判員に選ばれ「大麻取締法は違憲であり、被告は無罪である」という判決を出したらどうなるだろうか。
 だが残念ながら、そんなことは決して起こらないだろう。そのような人物は選任手続きの段階で裁判員候補から外されるからだ。大麻のことを裁く資格は、大麻について無知であることが条件だ。死刑反対論者は死刑が問題になる裁判には、決して裁判員に選任されないように。
 裁判員制度は国民の不平不満が渦巻く不況時代の治安対策として、国民自身に「お上とともに社会を守る」意識を育てることを目的に、権力の思想に染めることを企んでいる。
 最高裁は来年度の候補者34万4900人に通知を送付すると発表した。平均すると302人に1人だ。通知がきたら「人を裁きたくありません」と拒否し、制度廃止に向けて反対運動に加わろう。裁判員裁判の情報は下記に。

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