68.  医療大麻解放戦線

 救援連絡センターが編集・発行する『救援』第479号(09.3.10)に、「医療大麻解放戦線」を名乗る刑事被告人(未決)の主張が掲載されていたので紹介しよう。
 成田賢壱氏はクローン病という難病にかかっているのだが(1999年頃発症、04年1月確定診断)原因すら不明のこの病気の患者は、ほとんど生涯にわたりステロイドや免疫抑制剤など、深刻な副作用を引き起こす薬物を実験的に大量に投与されている。大変な苦痛を伴う手術を何度もうけ、飲食は制限され、完全に栄養剤のみの生活になったり、もっとひどくなると人工肛門をつけることになるという。
 しかし海外では大麻吸引が有効な治療法になっていることを知った成田氏は、自己治療の一環として大麻を連続使用し、比較的良好な状態を保ってきた。勿論、大麻取締法の存在は知っていたが、表面的な尊法よりも、自分自身の健康をとることを選んだのである。
 ところが昨年11月、東京駅で大麻取締法違反で逮捕された。と同時に、LSDも所持していたことから麻薬取締法違反でも起訴された。そのため罪状は2つあるが、成田氏は大麻取締法については医療的な理由から全面的に無罪を主張している。
 日本では医療大麻の研究が一切されていないため、患者自身が海外の情報を集め、自らを人体実験に供する以外に研究の方法がなく、それには「犯罪」のリスクが伴うため公表することができない。従って医療大麻について公然と主張できるのは、刑事被告人としての公判の場しかないのである。
 しかしこの陳述には、それを科学的に証明してくれる医者も科学者もいない。証拠も証人もない陳述など、裁判官からすれば被告人の思い込み、弁解、屁理屈でしかない。まして成田氏のように大麻だけでなくLSDも所持していたとなると、医療より嗜好目的と見なされるだろう。
 私自身の体験を話せば、大麻取締法で2度目にパクられた1999年、それは酸素吸入器を付ける身になって1年後のことだが、私は冒頭陳述において、大麻が戦前は喘息の漢方薬として市販されていたこと、私は喘息ではないが肉体の歪みから肺が圧迫され、肺活量が常人の半分しかなく、風邪を引くと息苦しくなるのだが、大麻を吸うと気管支が開いて楽になるという効果があるため、大麻を愛用してきた。大麻は麻薬ではなく、医薬品なのだと主張した。
 ところが判決公判を前に、弁護士から「実刑か執行猶予かギリギリの線だ」と言われたので、最終弁論では反省の色を示すつもりで「今後は大麻をやめるつもりです」と言ったところ、裁判長が「体に良いのにやめるのですか?」と、意地悪な質問をしてきた。そこで急遽「大麻は咽には良いが、煙は肺に悪いので、この機会にやめる気になったのです」と言って、酸素吸入器を示したところ、裁判長は大きくうなづき、執行猶予をつけた。余談ながら「食うのはどうか?」という質問はなかった。
 いずれにせよ、被告人席からのみ可能な医療大麻解放の主張を、大麻事犯の被告たちは大いに活用し、「医療大麻解放戦線」の戦士として、大麻取締法という天下の悪法を撃つべきである。そのような戦士のアピールがあってこそ、大麻を吸わない人たちのサポートも期待でき、戦線は拡大するだろう。
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