5.大麻精神病はデマゴーグだ

 靖国参拝を強行し、ヒトラー気取りの小泉に、憲法改悪を許し、共謀罪を制定されたら、大麻のことなど論ずるはおろか、内緒話もできないだろう。いわば暗黒のファシズム前夜、今のうちに大麻のことを語っておこう。
 桂川裁判に見たように、司法権力は大麻の有害性を公知の事実として、それを審議する気など毛頭ないことが判明した。しかし大麻の何が有害なのか。大麻は麻薬ではない。麻薬でないから大麻取締法を定めたのだ。従って麻薬や覚醒剤ではない別の害を持つドラッグということになる。
 ヘロイン、コカイン、シャブなどはカルシウムを破壊し、禁断症状が激しく、食欲を失って廃人化するのに比べ、大麻は食事を美味くし、禁断症状はなく、ストレスを解消して気分はハイ。この健全な大麻にタバコ以上の有害性を附与するために御用学者は捏造する。
1、大麻は覚醒剤、鎮静剤、幻覚剤の三つの性質を持つとても怖い乱用植物です。
2、脳に与える障害作用はヘロイン、コカインに劣らない。
3、暴力をふるうなど、情緒不安定、集中力の消失、思考の変化、知的機能の低下を起こし、ついには「大麻精神病」となる。
 『マリファナは怖い−−乱用植物』薬事日報社 05.5
 この本は私の住む地域の町立図書館の新刊コーナーに紹介されていたもので、このような科学的には何の根拠も裏付けもない教本が全国津々浦々の図書館に備えられているのだ。もっともこの図書館には、オークラ出版の『マリファナ・ブック』も備えてあるが。
 大麻が一部の使用者に精神障害をもたらすのではないか……という懸念は19世紀から続いており、1894年、英国政府の要請を受けてインド大麻委員会が設立され、インド全域の精神病院を2年間にわたって徹底調査した。その結果、潜伏していた精神病を顕在化させたという例はあるが、大麻が原因で精神病になったというケースはなく、委員会は大麻の使用を抑圧することに反対を表明している。(それから100年後、インドはWHOの圧力により大麻を非合法化した)
 この調査にも関らず、大麻の使用が精神異常につながるというのがアメリカにおける初期のマリファナ禁止論者の主張だった。この主張は60年代以降のマリファナの研究の中で完全に否定され、03年に発行されたレスリー・L・アイヴァーセン著『マリファナの科学』では、「したがって大麻使用と長期的な精神疾患との間の因果関係は、ほとんどの人間にとって無縁だと考えてよさそうである」と結論づけている。
 要するに、大麻精神病というのは完全なデマゴーグだということ。この世には存在しない病気をでっち上げて、大衆を管理する悪質な宣伝なのだ。こんなデマゴーグは21世紀の大麻先進国では通用しないだろう。オランダに倣って大麻の個人使用を非犯罪化したヨーロッパ諸国、カナダ、オーストラリア、現在は反動化して厳しくなったが70年代には解禁寸前まで行ったアメリカなどはもとより、大麻文化の起源インドとその周辺の国々、中東からアフリカ、ラテンアメリカまで伝統的な大麻文化圏の国々では全く通用しないはずだ。要するに日本以外の国々では、現在合法か非合法かを問わず、社会生活の中に大麻文化が浸透しており、大麻に対する民衆レベルでの耐性が備わっているのだ。

 これに対して世界一の大麻後進国日本では国民大衆が大麻に対する無知と偏見に閉ざされているため、大麻は想像の中で恐るべきモンスターと化し、大麻精神病が被害妄想を煽るのだ。そこで大麻常習者は「ラヴ&ピース」の笑顔の裏で、得体知れぬ悪魔に魂を売って、束の間の愉悦、非現実的な妄想、天国の夢を貪り、地球滅亡の秘密情報とサバイバルの黒魔術によって、良からぬことを企む危険な精神異常者と見なされるだろう。
 こうした「大麻汚染」「大麻精神病」のデマゴーグによって、国民大衆をマインド・コントロールする支配権力が、大麻を否定し、大麻ジェノサイドを企むのは、第一に大麻が石油資源の大量消費文明に対抗するオルタナティヴ文明のバイオ資源だという経済的理由からだが、第二に大麻のハイが暴力と戦争に反対する「ラヴ&ピース」のパワーを持つという思想的理由もある。
 しかしそれ以上に、大麻のハイがウソやペテンを見破って、真実を見せるという直感的理由が大きいのかもしれない。権力者たちは自分たちの正体を見られることを怖れる。その上戦争が止められ、平和が実現し、世界が蘇生することに敵対して「大麻吸いの言うことは狂っている」と言って、大麻使用者を気狂い呼ばわりするのである。そこで大麻吸いのある者は濡れ衣を晴らすために、大麻精神病がデマであることを立証する。
 例えば桂川直文氏は控訴審の法廷において「私が大麻精神病になどなっていないことは、ここでこうして正常に話すことで明らかである」と供述した。これに対して裁判所は大麻事犯としては最重刑をもって、被告の正常さを立証したのである。
 そこで今度は私だが、『週刊金曜日』の「第16回ルポルタージュ大賞」に応募した「マリファナとヘンプの最後進国」という私のルポが「佳作」に入選した。最終審査員を本多勝一氏、佐高信氏など辛口の論者で固めたマス・メディアの一角から「正気」を認められたのである。私はまとも、言うこともまとも!

 

   大麻精神病

潜水艦の乗組員たちが 大麻でパクられると
マスコミは 武器を持った自衛隊員が
海底の密室で 大麻を吸って気が狂い
ミサイルを乱射するような危機感をあおり
軍事アナリストは「抜き打ち尿検査を」と言った

やがて「大麻精神病」の予防検査と称して
抜き打ち尿検査が 自衛隊だけでなく
学校 職場 公民館 盛り場などでも実施され
陽性反応が出たら 大麻常習者と見なされ
連れて行かれる先は 病院でなく監獄だ

大麻精神病とは デマゴーグである
現実には存在しない病気をでっち上げて
大衆を管理する悪質なデマ宣伝だ
今や大麻後進国 日本でだけ通用する
大麻は有害であるーーという唯一の理由だ

意識を拡大するという大麻の作用を利用して
ヨガ行者は自我意識を 宇宙意識にまで拡大し
「梵我一如」で 精神を統一する
もし大麻が精神を分裂させ 意識を狂わすなら
仏陀も シャンカラも ラーマクリシュナも
みな気狂いだ
                05.10


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