44. 大麻自由化を占う(2)

 今年は大麻取締法の制定60周年、弾圧40周年という節目の年だ。このアメリカ仕込みの悪法は、マスコミを使って「大麻汚染」という迷信をはびこらせ、今やたった0.5グラムの所持でも逮捕され、新聞テレビのニュースになるという異常さである。
 ヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどの先進諸国が、大麻の個人使用を非犯罪化し、医療大麻を解禁したのみならず、バイオ資源として産業化し「ヘンプブーム」を生み出している現実と比べて、日本の迷妄は深刻のきわみである。
 しかしアメリカしか見ていないわが国のリーダーたちは、石油資本をバックにつけた共和党ブッシュ現政権の大麻敵視政策に同調して、ヘンプブームなど何処吹く風である。従って私たちが大麻解放を叫び、いかに運動してみても、アメリカが大麻を合法化しない限り、属国の大麻取締法を廃絶することは不可能である。
 そのアメリカは今秋が大統領選挙。大麻に関しては共和党が取締派、民主党が解放派だ。72年の大統領選挙では共和党のニクソンに敗れたとはいえ、大麻合法化を公約したマクガバンという民主党大統領候補がいた。次いで76年の民主党カーター政権は、大麻自由化へあと一歩と迫った。しかし民主党なのに、世紀末を2期も勤めたビル・クリントン大統領は、大麻政策に何の変革もしなかった。ビルは「マリファナの煙を口の中に入れたことはあるが、肺までは吸っていない」と言った。こんな男の女房ではヒラリーも似たようなもんだろう。一方オバマは、10代の頃ドラッグにはまったことを告白している。
 勢いづくオバマが民主党の指名候補として、大統領選に勝利する可能性は大きい。よほどの不祥事(暗殺とか)がない限り、初の黒人大統領が登場し、「変革」のスローガン通り、斜陽化する石油王国を経済的、生態的に変革するため、大麻を合法化し、ヘンプ産業を奨励するだろう。満を持していた業界はいっせいに始動し、またたく間にヨーロッパ先進国に追いつくだろう。
 そこで日本はやっとマインド・コントロールから醒め、大麻取締法を廃棄し、遅まきながらヘンプ産業を起こすべく、政府が補助金を出しても、マニュアルがない、種子もない。なにしろ大麻の研究そのものまで封じてきたのだから。
 種子は北海道の野生大麻から採集できるが、パルプ、建材、繊維、食品、オイル、薬品、化粧品、プラスチックなど多様なヘンプ産業のノウハウを取得するために、企業は先進国に研究員を派遣し、イチから始めるしかない。しかし先ずは地球温暖化対策として、バイオエタノールの生産こそ急がれる。
 わが国のCO2対策はもっぱら原子力に依存しているため、バイオ燃料の開発はまだ模索段階である。大麻解禁は石油や原子力への依存から脱却し、再生可能なエネルギー政策に転換するチャンスである。従って大麻合法化と同時に、バイオエタノールの生産が開始できるように準備をしておかねばならない。大麻の栽培免許と研究免許を取得した人々が、プロジェクトを組んで研究と実験を重ね、エタノール生産のためのマニュアルを作っておくことだ。
 バイオエタノールは大量生産システムによって、原料や製品を長距離輸送して、石油を使っていては無意味である。従って栽培から製造、販売、消費までを「地元」で賄ってこそ、CO2対策として有効であり、利潤も上がるだろう。
 大麻は熱帯から寒帯まで、高地でも低地でも栽培が可能であり、米のように人手がかからず、農薬も化学肥料も必要としない。その上生態系を狂わす外来植物ではなく、祖先代々親しまれ、神聖視されてきた植物であり、一年草として毎年豊富な枝葉を繁らせ、美しく、香り良く、エタノールの原料として最適である。
 過疎老齢化した農村地方の休耕田や耕作放棄地を開墾するためには、「吸いながら栽培しよう麻畑」のキャンペーンを張って、都会で貧しく酷使されている若者たちを呼び寄せ、荒れ果てた故郷を麻のみどりで蘇生させる農夫として、また地元に設立したバイオエタノール工場やエタノール・スタンドの労働者として、労働の喜びと労働者の誇りを復活させるのだ。いかにも、ヘンプ産業の未来は限りなく明るい。
 ただし嗜好用の種なしシンセミアや、遺伝子組換えハイブリッドなどの栽培は、産業用ヘンプとの交配を避けて室内でするしかあるまい。それとも麻畑の種つきヘンプをパチパチ吸うか。どちらにしても「ボン・シャンカール!」だ。
                             (08.3)
 「お知らせ!」
○『アナナイ通信2号』が近日中に発行します。この「大麻自由化を占う(2)はその巻頭エッセイです。2号には「大麻をめぐる40年の闇」=ポン、「極私的人物論 桂川直文」=麻生結、「無煙日記」=桂川直文など盛沢山です。カンパ500円、4月中に発行予定。
申込みは 390-0222 松本市入山辺460-9 アナナイ通信編集部

○桂川直文さんが2月1日、富山刑務所から再び京都刑務所へ還送されました。昨07年1月から、獄中と支援者との交信が完全に遮断されていたが、これは富山刑の検閲が過剰なためで、京都刑では交信が可能になった。3.25付の手紙によれば、木彫りの職訓を辞め、京都刑へ還送されたのは本人の希望とのこと。京都刑は規律が厳しく、仮釈も渋いらしい。いずれにせよ、『アナナイ通信』の差入れが可能と分かって、編集に拍車がかかった。獄中者を励まし喜ばすような機関誌を作りたい。
                                    (08.4.1)


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