33. 風が変わって追い風だ

前回詩の形で斉藤次郎氏の大麻事件を紹介し、これは文部科学省あたりの謀略臭いとして、大麻取締法が思想弾圧の道具として使われたことに注目した。
 案の定、斉藤氏の取調べは僅か12日で終わり、当日起訴、翌日釈放という異例の処分を受けた。権力にすれば、著名な教育評論家を見込み捜査で逮捕し、マスコミに晒すという目的を果たした以上、捜査の違法性を問われる前に、大麻のことは穏便に済まそうという魂胆だろう。
 戦前の悪法「治安維持法」が、自由と人権を守るために抵抗する市民の思想、信条、良心を徹底的に弾圧したように、戦後の悪法「大麻取締法」はその役を担おうとしているのだ。だがこうした大麻取締法の「乱用」は、この悪法の寿命が尽きかけていることを暗示しているようだ。
 昨06年、大麻取締法で検挙されたのは過去最高の2288人、その3分の2が20代以下の若者である。これは最近の若者に不良が増えたからではない。インターネットの発達によって、若者たちが大麻の真実と事実を知ったからだ。吸う吸わないはともかく、今時、大麻が麻薬だと思っている若者などいないと言われるように、若い世代にはマスメディアのマインドコントロールなど通用しなくなったのだ。この傾向は増加の一途をたどるだろう。
 さらに地球温暖化や環境汚染の深刻化が、大麻の合法化を迫っているのだ。例えば長野県では、大麻を原料とするバイオエタノールの研究が、学者と地域住民との共同で行われようとしている。沖縄の宮古島では、農薬に汚染された地下水を浄化するため、大麻の吸水力を実験してみようという島ぐるみの計画がある。これらの緊急を要する問題は、個人的な嗜好次元の問題ではなく、バイオマス燃料にしろ地下水にしろ、普遍的な生命と生存次元の問題なのだ。THC抜きの繊維用大麻の栽培しか許可しないような、現行の申請制度では話にならない。わが国の大麻政策そのものが転換期を迎えているのだ。
 ついに風向きが変わった。大麻取締法の暴風に追いつめられてきた麻の民に、今や大麻取締法のウソとペテンを暴いて、「麻取り」を追いつめてゆく追い風が吹いている。
 「麻取り」とは厚生労働省の麻薬取締局のこと。「麻薬取締法」「覚醒剤取締法」「大麻取締法」など、法の権威の下に、この官僚たちは大麻がタバコや酒より害のないことを百も承知の上で(押収した大麻を吸っている)何10年にも渡って先輩から後輩へと、「ダメ、ゼッタイ」の嘘八百をつきまくって、自分たちの既得権益を守り、美味しい生活を貪ってきたのである。
 そのため過去数万人もの「違反者」がいけにえにされ、彼らの不幸と悲劇が食い物にされてきた。「麻取り」はまた、医療大麻の解禁を求める難病患者たちを絶望と死に追いやり、あるいは世界的な「ヘンプブーム」をもたらした先進諸国の大麻産業の復興など何処吹く風、北海道の野生の大麻を年間何万トンも焼却処分させて、莫大な国益を損ねてきたのである。
 その彼らが今から大麻政策の転換を迫られ、大麻取締法のウソとペテンが暴かれようとしているのだ。だが追いつめられるのは「麻取り」だけではない。そのバックにある厚労省という最悪の官庁が、そのまたバックにある米帝の属国機関である自民党政権が、そしてそのバックにある米帝の共和党ネオコン政権が、存亡の危機に追いつめられているのである。
 やがて日本でもアメリカでも現政権が敗退し、新たな政権を担うであろう双方の民主党には、巨大な反動の力が作用するに違いない。その力は長年のマインドコントロールによって築かれた無知と偏見の障壁をぶち破って、必ずや大麻を解放するだろう。だがそれまでは、大麻取締法を乱用して、弾圧の狂風が吹き荒ぶかもしれない。特に「大物」たちは狙い撃ちに御用心を!
 さあ、大麻自由化はカウントダウンに入ったようだ。
                 ボン シャンカール!!
                                  (10.19)


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