16. 地球温暖化とバイオエタノール

 暖かい正月。地球温暖化はますます深刻化する。CO2排出の削減を定めた京都議定書は、ブッシュ・アメリカによって無視され、超大国中国とインドの経済成長が温暖化に拍車をかけている。
 一年前の年頭教書でブッシュは、アメリカは石油依存から脱却するためバイオマス燃料を開発すると宣言し、その原料には木屑や干草などの廃物を利用すると明言した。しかしこの「クリーンエネルギー戦略」なるものはとんでもないダーティな代物であり、世界中に深刻な影響を与えている。
 即ち、ブッシュ・アメリカは「カーギル社」や「ADM社」などの穀物メジャーに巨額の補助金を与えて、食料や飼料として輸出しているトウモロコシを、バイオエタノールの生産に当てることによって、市場価格の高騰を図ったのである。
 すでに日本でも家畜飼料の値段が上がっている。原油価格が上昇しているのでエタノールの値段も上がるだろう。そうなれば肉類の値上げも必至である。しかし日本やEUのような経済力のある国はまだしも、アジア、アフリカの貧しい国では、食料として輸入しているトウモロコシや大豆などが値上がりすれば、恐るべき飢餓に見舞われるだろう。
 かつて穀物生産力をもっていた中国、インド、ロシア、ブラジルなどの大国が大量の穀物輸入国に転じつつある現在、世界最大の穀物輸出国アメリカのバイオエタノール政策は、「貧しい国は飢えて死ね」と言わんばかりである。
 では貧者から食料を奪うことなく、地球温暖化を防ぐバイオエタノール生産に適した植物資源はないのだろうか。いよいよ大麻が注目される時がきたようだ。EUではヘンプバイオマスが実験から実用段階にあるとか。大麻規制のない中国では、様々なヘンプ製品に次いでヘンプバイオマスも実用化されているに違いない。デジタル機器のプラスチックも石油からでなくバイオマスにシフトされてゆくだろうとか。そうなれば中国と成長を競っているインドも大麻を再合法化し、バイオマスの生産に着手するだろう。
 中国にしろインドにしろ、大麻に対しては日本のような「麻薬」の偏見や洗脳がないだけに、経済的、環境的に有効とあれば実用化に躊躇はないだろう。アメリカとIT産業などで連携しているインドだが、昨年の核実験のように、いざとなればアメリカも国連も無視して、信念を通す誇り高い国である。アメリカの都合で制定されたWHO(世界保健機構)の「麻薬単一条約」のペテンを打破して、大麻解放の先陣を切るのはやっぱりインド以外にないだろう。
 かくて日本だけが、アメリカから高い輸入穀物を買って、バイオエタノールを生産することになるのだろうか。輸送や生産などに大量の石油燃料を使って。
 大麻の真実を伝える気のない御用マスコミと、アメリカしか見ていない無能で卑屈な政治家や財界人や官僚によって、私たちの国は働き手を失った休耕田と耕作放棄地を年ごとに増大させながら、ひたすら亡国に向って進んでいる。そこに大麻の種子を蒔くだけで「美しい国」になるというのに。

 07 正月



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