桂川直文の獄中メッセージ

(1)緊急報告

 控訴棄却後、桂川裁判は6月2日、金井塚弁護士による上告趣意書が最高裁に提出されました。これに対して最高裁は6月28日、「有害性がないとか有害性は極めて低いものであるとは認められないとした原判断は相当」として、上告を棄却しました。
 そこで金井塚弁護士は7月1日、すかさず異議申立てをしましたが、これも7月13日、「理由がない」という理由で棄却されました。かくて桂川裁判は完全に終了したのです。
 そして7月28日付で桂川君より私信があり、翌29日に下獄することを知らせて来ました。ただし何処の刑務所に収監されるかは未定であり、これから1ヵ月くらい大拘の別棟で待機するとのこと。本人の希望は大拘で食事係として執務することですが、念願がかなうかどうかは不明です。今は、早期の仮出獄を祈念するばかりです。では、下獄前日に書かれたメッセージを掲載します。
 なお「桂川救援全国勝手連」のウェブサイトには、当分新しいデータをインプットしません。桂川関係のデータは全てこのHP(http://amanakuni.net/pon/index.html)に掲載しますので今後ともよろしく!
                                05.8.2 ポン
ーーー★ーーーーーー☆ーーーーーー★ーーーーーー☆ーーーーーー★ーーーーーー☆ーーーーーー★ーーー 

 山田塊也 様
7月25日付手紙受け取りました。ちょうど手紙が届く少し前に正担から明日下獄と告げられたところでした。2日前に約1年間同房で暮らした副房長のゴト師が下獄し、古参未決囚の連続下獄となります。現在1年2ヵ月の未決算入がありますので、あと3年10ヵ月刑期が残っています。あと1ヵ月くらいは別棟で分類待ちとなりますので、刑務所への持ち込みは3年8ヵ月くらいでしょう。刑務所で4分の1の仮釈を貰えれば約2年10ヵ月くらいで出所です。首尾よく大拘での当所執行が、うまいこと3分の1仮釈を貰えれば2年5ヵ月か6ヵ月くらいで出所になります。無罪を主張しながら出所の日を細かく計算するのは、何か情けない気分になりますが、御存知のように同房には無期を喰らった者(新房長)や執行猶予中に捕まって合計7年6ヵ月の者、5〜6年喰らいそうな者も居て、私は実刑仲間では2番目に短い刑期ですので、うらやましがれています。
 裁判を振り返りますと、控訴審で検察が大麻を有害とする資料を提出した時は、もしかしたらと思いましたが、結局ヌカ喜びに終り、検察と裁判所はグルであることを露呈しただけでした。
 私は無罪を主張しましたが、本当に冤罪で無実を主張して4年も頑張っている人もいます。それは14房にいるナイジェリア人のJさん、兵庫で貿易会社を経営していたのですが、従業員が郵便局強盗をして会社の事務所に金を隠していたので、同じ黒人だということで犯人に仕立て上げられてしまいました。共犯者が居て、社長は無実だと証言しようとしているのに、裁判所は証人申請を認めていないとのことです。このことは関西ローカルではTV番組にもなったようです。Jさんは「日本の検察、裁判所は皆ファミリーだ。一審の不当を高裁は見抜けない。見抜けてもフタをしてしまう」と怒っていました。本当にこの国の法務共同体は腐敗していると思わざるをえません。(本当の犯人は既にナイジェリアに帰国したとのこと)
 私を逮捕した麻薬取締官は「我々は法に従って仕事をしている」と豪語していましたが、拘置所にいる泥棒も「盗むことは私の仕事だ」と言っていますし、ヤクザは「ここに居ることも仕事のうちだ」と言います。一体、仕事とは何なのでしょうか。私も「ムショに行くことも私の仕事だ」と思うことにしました。刑に服してもウェブサイト、『アナナイ通信』などに原稿を寄せて、徹底的に闘います。
 大拘にいる未決囚は誰も大麻なんか犯罪とは思っていませんし(当たり前だ)刑務官にも大麻シンパが居ます。大麻を刑罰で規制するのは、今までそうして来たから、これからもそうするということだけという、全く理由にならない理由なのです。裁判官も正直にそう言えばいいのに、大麻には一定の有害性があることは否定できない等と言うから語るに落ちてしまうのです。とくに今回の控訴審判決は満員の葉っぱ吸いの前で、しゃあしゃあと言ったものですから、裁判官というのは恐るべき妖怪と言わざるをえません。幸い来年から新監獄法が施行されますので、もし外泊許可が取れるようなら一番に会いに行きます。再会を楽しみに下獄します。今後ともよろしくお願いします。
                       平成17年7月28日  桂川直文


桂川直文の獄中メッセージ目次 | HP表紙へ