amanakuni Home Page | なまえのない新聞ハーブ&アロマテラピー | 八丈島の部屋

第7回

女のからだの力、
そして許すこと、伝えること 

 (取材・文:ほった さとこ)



  ヨーニ!の初回で三砂ちづるさんは話題の人だった。昔の女性は月経の血をコントロールしていたと話す女性がいるよ!とその回に登場した“てくてく”の阿部恵子さんが教えてくれたのだ。
 三砂さんはブラジルで疫学専門家として活動。帰国後は自然なお産について様々な場所での講演や、身体についての本を出され、今年4月からは津田塾大学の教授で専門はリプロダクティブヘルス(女性の保健を中心とした疫学)。いつかお話を聞こうと思っていたところに、ほびっと村学校で三砂さんとナビィさんのお話の会『女のたしなみ、女のからだ』があるというので、そそくさと行ってきた。
 ナビィさんは寿(http://www.kotobuki-nn.com/)のボーカル。ナビィさんの言葉は率直でリズムがあって、更には面白かった。ユンタもついてきた!

《三砂さん:、ナビィさん:


:自分が生理になった頃、おばあちゃんに昔はどうしてたんだろうって聞いたことがある。瀬戸内海にいてお金もなかったので、海綿を小さくちぎって中に入れていたって。どうやってだしたん?って聞いたら、トイレに行って、ぷん!って出したって(笑)。
:私たちはおしっこやうんちはトイレでしますけれど、月経は自分でコントロールできない、垂れ流しですよね。ところが私がブラジルに住んでいるころ、日本に一時帰国した際に出会った、ある産婦人科の先生が日本の女性で尿もれの人が多いのは骨盤低筋がゆるんでいるんだと。昔の女性は月経だってコントロールできたんですよっておっしゃった。
 帰国後もその話が気になって90代後半の方の話を聞きに行ったら、80代と90代では全然違っていた。80代は外からナプキンの様なものをあてているけれど、90代は脱脂綿や紙なんかを丸めて詰めている。80代と90代では生活様式がずいぶんと変わっているんですね。女性が下着をつけるようになって、着物を捨てて、正座しなくなって。
 京都・先斗町の当時67歳の芸妓さんに聞いてみたら「60代の先斗町の芸者は下着をつけていない。50代以下はつけているけれど下着をつけない方が着物が綺麗だ」と。月経の時も下着はつけないで、生漉き(きずき)の紙を詰めている。タンポンのような何も感じない奥にではなく、入り口から関節ひとつ分くらいの所。で、トイレで紙を出すついでに、血も出してくる。紙を入れることで、意識をする。
 去年の10月から着物なんですけど、とても快適なんですね。女性が着物を捨てたのは、西洋式の下着をつけたからだと思う。着物は脇や襟が開いていて空気が通るのに、下着がブロックしてしまう。
 股に何かをつけていることがほんとうは不快なんだと思う。股は命の根源で私たちの生まれてきたところなのに、股に布を当てて蓋をして、感覚を遮断しています。
:自分達が生きている社会の中で、自分の身体に意識を向けるってことが全然ないなって。女性として持っているもの、子宮とか卵巣とか、身体のメカニズムを大事にしないで生きて年を取っていく。
:昔は身体の声を聞けて、外側に怪我をするのと同じようにわかったのかもしれません。また、運動科学総合研究所の高岡英夫先生は身体の中心軸、センターが大事だとおっしゃる。実際に軸はないけれど、くるぶしの前あたりから会陰を通って上に抜けていく。肛門の前の会陰を意識上のセンターが通るんです。だから出産が女性のパフォーマンスを高める。男性は肛門の前に外部装置がないので、武道で20年30年修行が必要。でも同じような境地に、女性は5、6人子供を産むことでなっていたと高岡先生はおっしゃる。昔の女性は腰が据わっていて鷹揚で受け止める力がありましたよね。不自由だったり、嫌な思いもたくさんあったけれども、身体の軸がしっかりしていた。
 女性が変わることは大事なのに、いまは月経は垂れ流し、出産も減って、身体の中心軸を作る機会をことごとく失っている。でも高岡先生に、私たちには芯の通った女性になるために外部装置があると聞いて感激したんです。無駄なことは何もない。月経は嫌なものだったけれど、実はそういうトレーニングになる。月経が毎月あることで、すごく前向きな気持ちになりますよね。今月はうまくできるかな、とか。
:もういま、チャレンジャーですよ。なんかやっているうちに出ちゃって、またやっちまったかって。だけど出るかもって身体を引き上げた時に、これがわたしのまっすぐっていう姿勢なんだって、すごく納得しました。一番大事なことは意識するってことなんじゃないかと思う。
 『オニババ化する女たち』の「自己の身体性の確認」って言葉。それができてないんだなって思います。だからすごく不安。あなたはそれでいいのよ、ナビィっていう歌手はこれでいいのよって言ってほしい。認めてほしい。みんなそれが欲しい。
:いまは悪循環になっているんですね。女性は受け止められていないように感じているし、自分の身体を肯定的に見る機会がなくて、出産も自分を変える機会となっていなくて、産まれてきた赤ちゃんを受け止められなくて。
:悪い循環まっただ中で育ってきた感じがする。結婚するとわたしのやりたいことは全部奪われるし、子供が産まれちゃったらもっと大変とか。人妻ってつまんない仕事ね・・・。みたいな連鎖の中で母親だけじゃなくて、またその母親も生きている。
:女としての自分を肯定的に捉えられなくなったのが70代からだと思っているんです。病院出産の走り世代。でも彼女たちは責められないの。戦争を生き抜いて、近代化や、病院出産をとてもまぶしいものと見ただろうし、母親たちの暗い台所の生活から抜け出したいと思ったでしょうから。私たちがこんなほけほけした生活ができるのもその世代のお陰です。でも、実際には親からは伝承として何も伝えられず、生活が全部変わって、これでよかったのかと思ったら、実は、女としての生活は楽しいことがなかった。そういう気の毒な世代です。
 私たちの世代はこの悪循環を次に伝えない責任があるし、この世代を受け止めてあげる必要がある。親に対して憤懣やる方ない人はかなりいると思うんですけれど、子供が許すしかないですよね。
:70代の人たちの夢や理想の実現としていまの形がある。みんな良く生きたい。心身共に健康で、周りの人たちとの関係の中で穏やかに生きていきたい。頭でいろいろ考えるんじゃなくて、自分はどう生きたいのかっていう欲をまずもって、そのまま生きていくのがすごい大事なような気がしているんですけど。
:女性として生きてきて楽しいよっていうメッセージをすごく伝えたいですよね。

 お話の後、ナビィさんは三線で女の魂!女のブルース!を歌ってくれた。それから安里屋ユンタをみんなで歌った。歌をちょっと歌うっていいね。歌の力というのか、こころがゆるみます。質問・なんでもコーナーでは、すご〜く怒ると子宮がグツグツなる人、自分の母としっくりこない理由がわかった人、月経のとき、紙を詰めてみたけど不安だから布ナプキンもあてているっていう人が数名いたし、いろんな話がでました。まさに座談会。三砂さんは、衛生的な問題から紙をつめることを積極的に勧められないとのことですが、まず私が目指すのは心と身体に芯のある女です。月経やセックス、ハグ、自分が実感できることに耳を澄ませたら、自分の中からきっと伝承したいことが生まれてくるはず。それを紡いでいきたい。
 ここヨーニ!では、あの日に話されたことを全部書いてはいません。貴重な言葉がもっとたくさんありました。何かを感じたら三砂さんの本を読んでください。三砂さんのまわし者みたいになってますが。あはは。ほんとに読んでもらいたい。愛がいっぱいで、不満を取ってくれて、新しいドアを開けてくれた感じです、私は。 

三砂さんが書かれた本(翻訳本も2冊あります)。どれもほんとにおすすめです!

『オニババ化する女たち-女性の身体性を取り戻す-』(光文社新書/本体720円)
『昔の女性はできていた-忘れられている女性の身体に“在る”力-』(宝島社/本体1,500円)
『女は毎月生まれかわる-からだと心が元気になる「月経血コントロール」ゆる体操-』(高岡英夫・三砂ちづる共著/ビジネス社/本体1,000円)
『わたしにふれてください』(Phyllis K.Davis著・三砂ちづる訳/大和出版/本体1,300円)
『パワー・オブ・タッチ』(Phyllis K. Davis著・三砂ちづる訳/メディカ出版/本体2,800円)



No.127=2004年11・12月号

なまえのない新聞のHome Page

amanakuni Home Page