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新刊紹介・

『ワークショップ〜新しい学びと創造の場』

中 野 民 夫



■『ワークショップ』の出版
この1月に、『ワークショップ:新しい学びと創造の場』(岩波新書)という本を出
版することができました。この名前のない新聞にも、92年から95年頃には、ジョ
アンナ・メイシーのディープエコロジー・ワークショップのことや、ベトナム出身の
仏教者ティク・ナット・ハンのリトリートのことは、何度か書かせてもらいました。
私自身が大きな影響を受けたこれらのワークショップや、その後の自然体験をベース
とした環境教育などでの経験をもとに、現在様々な分野で広がっているワークショッ
プの世界を概観する見取り図、その共通して持つ特徴や可能性そして限界や注意点、
さらには会議や講演会など日常の様々な場面への応用の道をまとめてみました。

■「参加・体験・相互作用」
 「ワークショップ」とは、本紙の読者にはおなじみでしょうが、先生や講師からの
一方的な知識伝達型の学び方ではなく、学ぶ者自身の「参加」や「体験」や参加者同
士の「相互作用」を大事にした「新しい学びと創造の場」のことです。もともとの意
味は「共同作業場」や「工房」。それが、演劇やアート、まちづくり、環境、開発や
国際理解、こころとからだ、精神世界、社会教育など実に様々な分野で、参加や体験
を重んじたグループによる学びや創造の場として展開し、欧米から世界中へ広まって
きました。
(本の19頁、図1-3 ワークショップの分類の試み2 をコピーして入れてくださ
い。)

■興隆の背景
 環境にしろ紛争にしろ現代の課題は多岐に渡り、問題の原因は複雑にからみ合って
います。誰かが「唯一の正解」を持っているわけではありません。だからこそ、私た
ち一人ひとりが、孤立したりあきらめたりせずに、集いあい問いあうことが大切で
す。「こんな風にかんじているんだけど」「どうしたらいいんだろう」「何ができる
んだろう」と。そして、そんな風に人が集まり、智慧を出し合うとき、その集い方に
もふさわしいやり方があると思うのです。楽しくて人間の根源的な歓びに触れるよう
な。それぞれの感じ方を大切にし、違いを多様性として認め合い、相互作用の中で大
きな力を生み出すような。そんな「活かしあう」集い方が。
課題の多い世の中で様々な分野で多くの方々が取り組んでいます。その必死の試み
が、今、「ワークショップ」と呼ばれる形に練り上げられてきているのだと思いま
す。いのちを分けもった私たち一人ひとりの奥底の何かが、このような方向へと突き
動かしているのではないでしょうか。

■「非日常」の可能性と限界
 「ワークショップ」というのは、「非日常」だからこその可能性と限界を持ってい
ます。日々皆があわただしく余裕もなく走っている現代社会の中で、自分や他者や自
然をあらためて丁寧に感じる瞬間を持ったり、お互いの相互作用の中で新しい気づき
や発見があります。新たな勇気や希望が湧いてくることも多々あります。でも一方
で、日常生活への橋渡しがしっかりできないと、単なる「非日常」空間だけのことに
なってしまいます。大切なのは、日常の現実ですから、そう簡単には変わらない自分
や他者や社会に、ねばり強く向き合い続けていくしかないのは言うまでもありませ
ん。

■さらなる応用の道へ
 私たちが様々な場面でもつ会議をもっと実りあるものにしたり、一方的な講演会を
もっと双方向的な魅力あるものにしたり、「人が集まる場づくり」を豊かにするため
に、ワークショップの手法はもっともっと応用できると思います。
本のあとがきにEメールアドレスを載せたので、各地で様々な学びや創造の場づくり
で奮闘していらっしゃる多くの方からメールをいただいています。ぜひ皆さんも本書
を読んでみていただき、感想をお寄せください。そして、より納得できる個人の生
と、よりまともな社会づくりに向けて、ともに力を合わせたいと思います。

◇中野民夫ワークショップ企画プロデューサー。企業社会の変革を夢見て広告会社
の博報堂に勤める一方、ビーネイチャースクールの講師や日本トランスパーソナル学
会の理事などを務め、エコロジーとスピリチュアリティの接点を探っている。昨年解
散したウェッブ・オブ・ライフの発起人として、90年代にはディープエコロジーや
ティク・ナット・ハンの紹介もしてきた。



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