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米英メディアの劣化ウラン弾報道

◆嘉指 信雄◆

■「人文字意見広告」と響き合う 米英メディアの劣化ウラン弾報道■

イラクをめぐる情勢が日々大きな展開を見せる中、アメリカメディアの多くは、
アメリカ軍の視点からの戦況報道におおむね終始していますが、劣化ウラン弾問
題に警告を発する解説記事と社説が、西海岸の代表的新聞「ロサンゼルス・タイ
ムズ」に、3月30日、31日と立て続けに出ましたのでお知らせいたします。

30日の解説記事(commentary)は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(公共
政策・社会調査スクール)のスザンナ・ヘクト教授によるもので、「ウラニウム
弾頭は、死の遺産を長き年月にわたり残すかもしれない」(Uranium Warheads
May Leave Both Sides a Legacy of Death for Decades)という、きわめて端的
なタイトルがつけられていて、内容も、劣化ウラン弾問題の深刻な実態を的確に
論じたものになっています。(下に抄訳を貼り付けておきます。)

翌日31日の社説(editorial) は、論調はずっと控え目ですが、「(劣化)ウ
ラン問題を直視せよ」(Face Uranium Issue)というタイトルに、その強い危惧
が集約的に表されています。(こちらも下に抄訳を貼り付けておきます。)

さらに4月2日には、「ロサンゼルス・タイムズ」の広告担当者から、「人文字
意見広告」を「ロサンゼルス・タイムズ」にも掲載しませんかという、以下のよ
うな勧誘のメールが届きました。

「私は『ニューヨーク・タイムズ』へのあなた方の意見広告を拝見しました。
西海岸でも『ロサンゼルス・タイムズ』にあなた方の意見広告を掲載することに
ついてお話したく思います。ご存じのように、まさに現在、南カリフォルニアか
らも多くの男性と女性が兵士としてイラクで戦闘に従事しています。あなた方の
メッセージは、息子や娘、夫や妻、父や母、友人が帰ってくるのを待ち望んでい
る人々に深く感謝されることでしょう・・・・」

勿論、無料ではないので(通常価格の35パーセント引きで引き受けてくれると
いうことですが)、残念ながら、現在の状況では応えることのできない勧誘です
が、続けて出された解説記事・社説と合わせて考えますと劣化ウラン弾問題に対
する「ロサンゼルス・タイムズ」のとても積極的な姿勢を示していると思います。

またイギリスでも3月30日に、スコットランドの新聞『サンデー・ヘラルド』
に、「米軍による劣化ウラン兵器の使用は“違法”である」(US Forces' Use
Of Depleted Uranium Weapons is “Illegal“)というタイトルで、ニール・マ
ッケイ記者による署名記事が出ました。

劣化ウラン弾の使用は、「戦争犯罪」であり、「人道に反する罪」であり、禁止
されなければならないと主張するダグ・ロッキー氏へのインタビューを中心にし
て書かれた、断固たる論調の記事です。
 
ちなみに、この記事の中に、「湾岸戦争帰還兵に関するある調査は、彼らの67
%が、深刻な病、目の欠如、血液感染、呼吸困難、融合した指などの症状をもっ
た子どもをもつことを明らかにした」というくだりが出てきますが、これは、ま
さに「人文字意見広告」の中で「劣化ウラン弾反対を唱えてきている国際的アピ
ール」の一例として引用した、ミシシッピー州の退役軍人家族に関する調査のこ
とです。
(参照:国際行動センター編『劣化ウラン弾・湾岸戦争で何が行われたか』pp.
190−191)(この記事も下に抄訳を貼り付けておきます。)

一方、アメリカ政府は、4月8日付の中国新聞によりますと、劣化ウラン弾の非
人道性を否認する見解を日本のマスコミ向けに伝えてきています。

中国新聞(地方紙)2003年4月8日 16版 社会 28面
「劣化ウラン弾「報道に疑問」 米大使館から

イラク戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾に関して、在日米国大使館は七日、在
京の報道機関に対し「報道の中には、事実関係に疑問が見受けられるものがある」
として、米国務省などがインターネットで公開する日本語資料を参考にして報道
するよう促す文書を送った。
白血病やがんなど湾岸戦争後の健康被害が、米軍の使用した劣化ウラン弾が原因
だとする報道に、米国側が打ち消しの姿勢を示した形。関係者によると、文書送
付は本国の指示で、イラク戦争をめぐる情報戦略の一環とみられる。」

アメリカ軍は、湾岸戦争で少なくとも300トン以上の劣化ウラン弾を使用しま
したが、ご存じのように今回の戦争でもすでに使用していることを認めています。

劣化ウラン弾は“通常兵器”として扱われているわけですが、その放射能や毒性
の影響は時間的にも空間的にも限定できません。地球に生命が生まれてから40
億年と言われていますが、劣化ウランの放射能の半減期は45億年!劣化ウラン
弾はまぎれもない大量破壊兵器です。新たに数知れないヒバクシャをつくり出す
危険性のある非人道的兵器を使いながら、「イラクの自由」作戦と名づけられた
戦争・・・・・何という欺瞞と罪業、あるいは無知と傲慢でしょうか。

今こそ、もっともっと声をあげましょうーーNO WAR NO DU!
                   
                   (文責:呼びかけ人代表・嘉指信雄)

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■『ロサンゼルス・タイムズ』解説記事(2003年3月30日)■

「ウラニウム弾頭は、死の遺産を長き年月にわたり残すかもしれない」
スーザン・ヘクト
(抄訳、原文640語)

イラクとの戦争によって引き起こされる人的損失は明らかであるが、長年にわた
って私たちに取り憑くことになるかもしれない隠された危険に気がついている者
は多くない。

劣化ウラン弾道は本質的に「ダーティ・ボム」(汚い爆弾)であるーーそれほど
放射性は高くはないが、毒性をもっている。そのため、劣化ウランを砲弾やトマ
ホークミサイルだけでなく装甲貫通弾頭の先端などとして戦闘において使用する
ことに対して世界的に抗議が高まりつつあるのである。

これらの弾頭は湾岸戦争とコソボにおいて使われ、大きな戦果をあげた湾岸戦争
においては少なくとも350トンの劣化ウランがイラクに落とされ、コソボにお
いては約13トンの劣化ウランが紛争地域において爆発された。
 
米国による爆撃の後、軍人や民間人の間に現れた「バルカン症候群」は湾岸戦争
症候群との間に類似性を示している。

調査結果については論争が続いているが、今や多くの科学者は、こうした惨禍は、
重金属毒性の結果であり、そしておそらくはとても低レベルの放射線被爆の結果
だとみなしている。

劣化ウランは、呼吸器・腎臓障害、発疹、そして長期的には生殖・神経組織への
害のみならず骨のガンを引き起こす。

湾岸戦争中に、あるいは湾岸戦争の結果亡くなった10万人よりも多い数のイラ
ク市民も、同様の多くの健康障害に苦しんでいる。(今戦場に赴いている)兵士
たちの家族も深刻な懸念に襲われるだろう。

「民主化されたアラブ世界」というバラ色の幻想は、聞こえのいいキャッチフレ
ーズにはなるかもしれない。しかし、広範囲にばらまかれた劣化ウラン弾の現実
は、ポエニ戦争の墓碑銘――「彼らは荒廃を作り出し、それを平和と呼んだ」を
思い起こさせる。

■『ロサンゼルス・タイムズ』社説(2003年3月31日)■
「(劣化)ウラン問題を直視せよ」(抄訳/原文:640語)

1960年代、合衆国は、ベトナムのジャングルを裸にするためエージェント・
オレンジと呼ばれる枯れ葉剤を使用した。戦後およそ6万人の退役軍人が、この
化学製品に含まれていた致命的毒物ダイオキシンのために健康を損なわれたと訴
えた。この経験は多くの退役軍人に疑惑を抱かせてきた。

劣化ウランに関しては、こうした疑惑は根拠のないものだと判明するかもしれな
い。しかし、歴史が示しているように、こうした疑惑は徹底的かつ率直な開示を
通じて解消することが重要である。

■『サンデー・ヘラルド』(2003年3月30日)■
「米軍による劣化ウラン兵器の使用は“違法”である」
  ニール・マッケイ(抄訳/原文697語)

英米連合軍はイラクへの戦争において劣化ウラン弾を使用しており、これらの弾
薬は違法な大量破壊兵器として見なしている国連決議を意図的に無視している。
 
劣化ウランは大地を汚染し、使用する兵士、標的となる兵士、市民の間に健康障
害やガンを引き起こし、先天性異常をもたらす。
 
ペンタゴンの劣化ウランプロジェクトの前ディレクターであるダグ・ロッキー教
授は、劣化ウランの使用は“戦争犯罪”であると言っている。(ロッキー教授は、
ジャクソン大学の元・環境科学教授であり、かつて米国陸軍少佐として米国国防
省の命により、第一次湾岸戦争劣化ウラン砂漠清掃任務に携わったことがある。)
 
ロッキー氏によれば、「これは道義の問題である。この戦争は、イラクが違法な
大量破壊兵器を所有しているかどうかに関わるものだった。しかし私たち自身が
大量破壊兵器を使用しているのだ。」そして、「こうしたダブル・スタンダード
は許されない。」

2002年8月に国連の小委員会によって出された報告によれば、劣化ウラン弾
使用が違反する法律の中に含まれるのは、人権宣言、国連憲章、大量虐殺条約、
拷問を禁じる条約、1949年の4つのジュネーブ条約、1980年の通常兵器
条約、1899年と1907年のハーグ条約(これらは、「毒物や毒性のある兵
器」および「不必要な苦しみを引き起こすことを狙った兵器、弾頭、物質」の使
用を明確に禁じている)である。
これらの法律の全ては、軍事的紛争における不当な苦痛から市民を守るために作
られたものである。
 
劣化ウランは、1991年の紛争以降、20万人のアメリカ兵の間に見られる湾
岸戦争症候群の症状――典型的には慢性的な筋肉・関節痛、疲労や記憶喪失――
の元凶だとされてきている。
 
劣化ウランはまた、第一次湾岸戦争後の「イラクにおける先天性異常やガンの増
加」の最も有力な原因としてあげられている。
国連小委員会によれば、「ガンは7倍から10倍に増加し先天性異常は4倍から
6倍に増加しているように見える」。
 
ペンタゴンは、第一次湾岸線の後、320トンの劣化ウランが戦場に残されたと
認めているが、ロシアの軍事専門家たちは、1000トンの方がより正確な数字
だと言っている。

湾岸戦争帰還兵に関するある調査は、彼らの67%が深刻な病、目の欠如、血液
感染、呼吸困難、融合した指などの症状をもった子どもをもつことを明らかにし
た。
 
ロッキー氏は『サンデー・ヘラルド』にこう語ったーー「ある国の軍隊が、他の
国を勝手に汚染させ、人々と環境に害を及ぼし、そして自分たちの行為の帰結を
無視することなど許されない。そんなことは、人道に反する罪である。」

「私たちは、世界の市民にとって正しいことをしなければならない。
それは劣化ウランを禁じることである。」

ロッキー氏は米国と英国に対し、「自分たちの行動の非道義的帰結を認め、医学
的対応と徹底的な環境保全の責任を引き受ける」よう求めた。
そして、「毒物の荒野を作り出し、無差別に人を殺すことになる兵器を使うこと
などは許されない。それは、戦争犯罪そのものである。」と言い加えた。

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