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企業支配拡大に戦争という口実

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1982年に「科学・技術・エコロジーのための研究基金」をインドで創設
したヴァンダナ・シヴァは、物理学者でエコロジスト、活動家、作家など多面
な顔をもつ、第3世界を代表する論客のひとりです。彼女の一貫した反グロー
バリズム精神はこの論文にいかんなく発揮されています。じつは、このタイトル
の前半分は「ベクテルと水のための血」というのですが、いま、インドをはじめ
第3世界の国々は水道の民営化問題で大揺れに揺れています。ベクテルは世界
で200の水事業に関わっており、グローバリゼーションの最大旗手といって
もいいでしょう。

森田 玄/TUPメンバー
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「世界最大企業ベクテル:企業支配拡大に戦争という口実」
ヴァンダナ・シヴァ
5月12日 Zネットマガジン

対イラク戦争が始まって1ケ月もたたないうちに、本当の勝者が姿を現わしつ
つある。ベクテルはイラク再建のため6億8千万ドルの契約をものにした。ア
メリカ主導の戦争がまずイラクの病院、橋、水道施設を爆撃し、こんどはアメ
リカ企業が入念な破壊のあとの復興事業から利益をむさぼりはじめている。

血は石油のためにだけに流されたのではない。狙いは水道やほかの生活必需サ
ービスの支配にもあったのだ。経済成長の鈍化とグローバリゼーション停滞の
折、戦争は企業支配拡大の都合のいい言い訳になった。WTOで不足なら戦争
を使えばいい。

これが、アメリカを支配し、また世界を支配しようとしている新保守主義者た
ちの基本的な経済・政治哲学らしい。この1ケ月で明らかになったのは、新世
界秩序が徹底した腐敗の上に成り立っていることだ。

ボブ・ハーバートが「戦争の効用はベクテルに聞け」で述べているように(ヘ
ラルド・トリビューン、2003年4月22日号)、どこかでジョージ・シュ
ルツがほくそ笑んでいる。軍産複合体の説明にだれかの写真をつけるならもっ
てこいのシュルツは、ロナルド・レーガン大統領のもとで国務長官を務めたが、
サンフランシスコに拠点をおくベクテル・グループの長年の重鎮で、かつては
社長の座につき、現在は同社役員で最高顧問になっている。

米地上軍がバグダッドに迫る皮肉なタイミングで、今月、帰らぬ人となった反
戦ソウルシンガーのエドウィン・スターとは違い、シュルツは戦争の効用をわ
きまえている。そして、彼はこのイラク戦争を喉から手が出るほど求めていた。
シュルツは主戦論の最右翼を担う「イラク自由化委員会」の議長を務めていた
が、この委員会は石油資源豊富な同国の政治的民主化にとどまらず、アメリカ
が儲けやすい“経済復興”にまで狙いを定めていた。

「今行動しよう、危機は迫っている」というタイトルのもと、昨年9月ワシン
トンポストへの意見投稿記事でシュルツは、「フセインに対する即時軍事行動
とフセイン後のイラク再建に向け、多国間協力のための強力な準備ができてい
る」と書いた。いったい彼は、その再建準備をどの会社が采配すると考えていた
のだろうか。

先週、シュルツのベクテル・グループは戦争の効用を端的に示してくれた。ブ
ッシュ政権はベクテルに最初の大規模なイラク再建契約を与えた。18ケ月で
6億8千万ドルというこの契約により、1000億ドル以上にのぼるであろう
イラクの長期復興再建事業の先鞭をベクトルが勝ちとったことになる。ベクテ
ルは金儲けのライセンスをもらったようなものだ。しかもそのライセンスは、
ブッシュ政権との結びつきが深い一握りのアメリカ企業だけで密室決裁された
ものだ。サダム・フセインの独裁制がアメリカ企業の独裁制にとって替わられ
つつある。それら企業の役員室に座っている人間たちと、ホワイトハウス、国
防総省、各政府機関に座っている人間たちのあいだには、ほとんど線引きがで
きなくなってしまった。

不透明性と腐敗。重症急性呼吸器症候群(SARS=新型肺炎)で中国の不透
明さが露呈した。ベクテルがイラク復興事業の最初の契約を得たことは、企業
ルールが不透明性、秘密主義、腐敗のもとで決められている顕著な例だ。ボリ
ビアやインドの水道民営化契約であれ、イラクの復興事業契約であれ、秘密主
義と民主主義と透明性の欠落が、市場と利益獲得手段の特徴だろう。「自由貿
易」のどこにも自由などありはしない。それは高圧的で腐敗し、嘘にまみれて
暴力的である。企業支配がサダム・フセイン型独裁制への代案になることはあ
りえない。それは独裁制の入れ替えにすぎない。国を乗っ取り、市場獲得のた
めに軍事力を行使する企業の新たな独裁制がはじまるだけだ。

企業独裁制に固有の不誠実さと欺瞞について、「イラク自由作戦」の名でそれ
を押しつける人間たちは、はっきり見抜けないらしい。その原因は、自由と創
造に関する根本的混乱にあるようだ。

7000年におよぶメソポタミアの歴史が米軍の目前で破壊されたとき、ドナ
ルド・ラムズフェルドは、「自由な人々は自由に間違いをするし、犯罪も犯し、
悪事もはたらくものだ」という不見識で無責任なコメントを吐いた。この理屈
でいけば、世界貿易センターに飛行機を激突させたテロリストたちは「犯罪を
犯し、悪事をはたらく」合法的な自由を行使していたことになる。そして、米
軍がバグダッドとその歴史的遺産の略奪を黙認してかまわないという同じ理屈
から、アメリカは9・11以後の対テロ戦争を始める権利をもたなかったこと
になる。

戦争で他国に「自由」をもたらそうとしている連中が考える人間的自由に混乱
があるのと同様、再建と「破壊」についても混乱がある。イラクで起きたこと
は破壊だ。なのに、それが再建という話にすりかわっている。無実の人たちが
殺され、何千年におよぶ文明の歴史が破壊と消滅の憂き目を見た。

ところが、復興人道支援局(ORHA)の責任者に一方的に任命されたジェイ
・ガーナー元米陸軍中将は「イラクに新しいシステムを誕生させる」という。
爆弾が社会を「誕生」させることはない。生命を抹殺するだけだ。古代文明の
歴史・文化的遺産を破壊して、新しい社会など「誕生」するはずがない。イラ
クの歴史的遺産を破壊されるまま黙認したのは、この新しい社会「誕生」幻想
を振りまく必要条件だったのかもしれない。

アメリカの指導者たちは、彼ら自身の社会がアメリカ先住民の皆殺しの上に建
てられたため、この冒涜行為が見えないのかもしれない。「他者」の抹殺も、
世界唯一の超大国の実権を握る人びとには「自然」なことのようだ。「誕生」
の過程で、文明と何千もの無実の人命を故意に破壊するという考え方が、もし
や西洋的家父長制の「創造幻想」の表れだとしたら、それが破壊を創造と、抹
殺を誕生と取り違える混乱を招いているのだろう。

「創造幻想」は、資本と機械(戦争機械を含む)を「創造」の源泉とみなし、
自然と人間社会、とくに西洋以外の社会を、死んだ、無力で、受身なものか、
危険で残虐なものとみなす。この世界観から、暴力に訴えてでも自然と非西洋
社会を解放しなければという「白人の責務」観念が生まれ、それを自由の「誕
生」と錯覚させるのである。「再建」の名のもとでイラクに略奪と暴力の経済
を打ち立てることの裏に何があるにせよ、ベクテルのような企業が戦争利益を
むさぼる事実は、戦争が手段を変えたグローバリゼーションであることを実証
している。全世界の人々にとっての課題は、反グローバリズム運動と平和運動
と真の民主化運動のエネルギーをひとつにまとめることだ。

私たちの課題は、自由の本当の意味を取り戻すことであり、それが「自由貿易」
とか「イラクの自由作戦」といった詭弁に貶められている状態から救い出すこ
とである。自由貿易協定とWTO規定に則って求められる「自由」や、イラク
戦争で得られる「自由」とは、企業が利益を享受する自由にほかならない。こ
んな自由は略奪のライセンスだ。そして企業の略奪と企業の自由が、民主主義
と人々の自由と社会を破壊している。全世界の人々が求めている自由は、軍国
主義と戦争で支えられた企業独裁制からの自由だ。このことはイラク市民にと
って重要であると同時に、軍隊や「自由貿易」協定で護られたグローバル企業
の侵略を受けているほかの国々の市民にとっても、またアメリカ市民にとって
も重要である。

ベクテルの契約と「復興」利権をもたらしたイラク戦争は、アメリカ企業と境
目がなくなったアメリカ政府の経済的・政治的決定について、民主主義と透明
性とアカウンタビリティ欠落の問題を浮き彫りにした。政府が企業利権の道具
になった政権はもはや民主主義ではない。「人民の、人民による、人民のため
の」統治が、「企業の、企業による、企業のための」統治に変質している。生
きた民主主義のためには、アメリカとイラク、そして企業独裁制が根をおろし
つつあるすべての国の政権交代が急務だろう。

(抄訳:森田 玄/TUPメンバー)

訳者注:ボブ・ハーバートはニューヨークタイムズのコラムニスト

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菅原 秀 Schu Sugawara
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