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ステューデントマーチin Iraq


テレビには映ることのない素顔のイラクを報告してくれる,イラクに行っている青年からのメールです。


2月18日午後。
世界各地から集まってきた若者と、イラクの若者が、国連事務所へ向かってデモ行進
をする。
プログラムには、"Student March to UN Headquarters"とある。チグリス川沿いの
道路を、大勢で歩く。道沿いの商店のオジサンや、子供たちも、一緒に手をたたいた
り、手を振ったりする。ええ雰囲気。

僕は、ホテル前でデモの出発を待っていたイラクの学生たちの中に入っていった。野
郎どもばかりやったのが、残念無念だ。(はっ!いかんいかんつい本音が…!)
片言のアラビア語で自己紹介をする。みんな聞いてくれる。「ヤーバーン(日本)、
ヤーバーン!」とゆう声があがる中で、例に漏れず誰かが「ジャッキーチェン!」と
か奇声を上げる。ジャッキーチェン、スィーニー(中国人)!と説明したけど、たぶ
んわかってくれてない。合掌ポーズイコール日本人(ないし中国人)、とゆう方程式
が彼等の頭には根強くあるらしい。いろんなとこで、合掌するイラクの学生と会っ
た。おもろい。
それししても、なんでやろ。スッと、彼等の輪に入れる。入れてくれる。言葉がわか
らへんにも関わらず、居心地が、いい。

日本のテレビとかでイラクの人々の様子が映る時、よく彼らは大声で「祖国万歳!」
とか「サダムに血と魂をささげよ!」と叫び、拳を突き上げている。その強烈なセリ
フに違和感を感じたり、或いは、全員が同じ調子で連呼している様子を気味悪く思う
人もいるかもしれない。「やらせ」的な何かも感じられるかもしれない。正直、僕の
中にもそうゆう疑念みたいな感情はあった。彼らは、どこまで本気なのだろうか、
と。

けど、実際その中に身をおいてみると、いろんなことが見えてくる。いろんなことに
気付く。あくまで、僕の雑感だが。
このようなデモでシュプレヒコールを先導する学生は決まっているらしい。おそらく
学級委員長とか、何かのサークルの代表とか、或いはクラスでの盛り上げ役の学生と
かいった具合に。ああたぶんこいついつもギャグばっかゆうてて人気者なんやろな
あ、と思われる学生が、ある一団の先頭に立って大声を張り上げ、手拍子をとる。
"Down,down,Bush!!"とか"Down,down,USA!!"とか"Yes for peace!! No for war!!"と
か"No blood for oil!!"といったような感じで、次から次へと掛け声を繰り出す。と
言いたいところだが、実際のところはそんなにスムーズではない。先導役が、周りの
友達に、次何にする?と相談してからやっと再開するといった具合だ。その間数秒。
数秒の沈黙。これが、何とも言えない。だるい雰囲気が、流れそうになる。ぼくは、
ちょっと笑えた。

それから、もうひとつ笑えた、とゆうか正直ちょっとほっこりした気分になったん
は、大声で騒ぎたてて雰囲気を作る前の方の学生とは対照的に、ああやれやれとゆう
感じでダラダラ手拍子をしながらついて来ていた後ろの方の学生を見たときだった。
しらけてる、とはゆわないまでも、その声の小ささ、参ったなあとゆうような苦笑い
を浮かべた表情からして、とにかくダルさ満開やった。日本で見るデモ報道の画面に
はおそらく映らない面々。彼等の姿をこの目で見れたのは、新鮮やったと思う。そ
りゃ授業の代わりとはいえだるいやろね、確かに。
国連前やホテル前なんかで、学生が何かわからんアラビア語でスローガンを叫んで
は、周りの人間がそれに合わせて、小さな円を描いて回る。そんなときにも、輪に入
れへんけど、かといって一人で遠くでタバコでも吸って一服するわけにはいかへん、
そやから仕方なくその円の周りで苦笑いを浮かべている。或いは一応手拍子だけ打っ
てみる。そんな学生も多い。その差が、僕にはすげえ人間らしく思えたし、おもろ
かった。発見、やと思った。

僕は、思った。学生は、このようなデモを、ひとつのパフォーマンス、もっと言えば
お祭り、ギャーギャー騒げる場所として、捉えているのではないか。もちろん多くの
学生の一般的な心情として、米国は嫌いやし戦争には反対やと思う。けど、僕が見る
限り、デモ自体そんなに切羽詰った雰囲気ではなかったし、真剣な怒りのようなもの
が吐露されていた様には感じられなかった。何より、自分自身こんなに楽しいデモっ
て、体験したことがなかったから、そう思ってしまっているのかもしれない。国連事
務所前に着いて、なぜか僕はダンスに加えてもらった。イラクの学生と、肩を組んで
踊る。主張は、誰かがアラビア語で叫んでいたりする。申し訳ない。僕にはたまに聞
こえてくる「サダム」とゆう単語ぐらいしかわからへん。

しかし、ギャーギャー踊っているだけの自分らは、その瞬間、間違いなく平和やっ
た。ピースを、実践してた。
それでええ、それでええと思う。楽しくやって、なんぼやないの。バグダッドの国連
事務所前で踊る人たち。

数十分のシュプレヒコールやら何やらのうちに、いつのまにかデモは一応解散し、僕
らは相変わらず騒ぎながら帰り道についた。ある学生が、アラビア語で何か僕に話し
掛けてくれた。僕にはわかるわけがなかったのだが、横に一緒に歩いていた大柄な学
生が英語で"Do you understand what his mean?"と聞いてくれた。英語の達者なその
大柄な彼は続けてこう言った。「ちょっと話そう。こっちに来い」。僕を集団から連
れ出して、もっと前のほうを2人で歩く。「彼はサダムを尊敬している、とゆうて
る」と、教えてくれた。

敢えてちょっと離れて会話を持とうとしている彼を見て、僕は思った。これは、もし
かしたら何かあるんかもしれんなあ。え!?もしかして彼の本音を聞けるかも?
「で、君自身はサダムについてどう思ってるん?」僕は、答えを待った。期待してい
た自分がいた。
「僕もサダムを尊敬する。サダムは全てのイラクの人々の意思だ。」勝手に期待し
て、勝手に残念がっている自分がいた。やっぱりそうか、とゆう気持ちもないではな
かった。

けどもしかしたら、あの発言は彼の本心やったかもしれへん。或いは、演じてるだけ
やったかもしれへん。どっちかなんて僕にはわからへん。2、3週間でイラクの人々
の何がわかる、とゆわれればそれまでやし、長い間イラクで暮らさなわからんことの
ひとつやと思う。
それでも、素人判断でゆわせてもらえば、やっぱり、「あれは本心やったかも」とゆ
う可能性は少なくとも捨てるべきではないと思う。それは、この学生の話に限ったこ
とではなく、教室で「アイラブユーサダム」と繰り返す子供たちにもいえるし、会議
場でいたるところから巻き起こるサダムをたたえるシュプレヒコールの嵐にもいえる
と思う。全てを「ヤラセ」と切り捨てる根拠は、どこにもないんちゃうかな。なん
せ、「100パーセント支持」(これはブッシュの「正義の戦争」とゆうしょうもな
いギャグよりはるかにええセンスしたギャグやと思っている。個人的には。)な訳や
から、まあ半分に割り引いても50パーセント。とゆうことは誰かさんの支持率より
高いではないか!まあそんなことどうでもええねんけど、とにかく、サダム支持は、
本音なんかもしれへん、その可能性は残しとかなあかんと思う。でないと、イラクの
一般ピープルひとりひとりの思いを想像し、共感することなんか、不可能になってし
まう。もし自分が相手の立場なら、どう感じるやろか。そこまで考えれたら、ええな
あと思う。

まだ、サダムについて、自分の中で整理できていない。

夕日を浴びながら、相変わらずジャッキーチェンの真似などしながら、僕らは笑って
帰った。バグダッド大学の学生が多いらしい。大学から、皆がバスに乗ってきたとゆ
う。要するに、動員されてしまったわけだ。お疲れ様です。
バスに乗っけてやるから、大学に来いよ、と誘われた。けど、彼等のあまりのパワー
に圧倒されそうになってた僕は、かなり疲れており、断ってしまった。残念。次イラ
クに行く時は絶対大学行くからな!野郎ども!だけとちごて乙女をちゃんと準備しと
いてくれえ!以上。失礼しました。

2003.3.13
タニザワソウイチロウ
pulausoichiro@h6.dion.ne.jp
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