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我々は見過ぎ、知り過ぎた

ジョン・ピルジャー/インディペンデント紙

◆藤澤 みどり◆

イギリスを中心に「湾岸戦争の子どもたち」写真展UKツアーをやっております
藤澤みどりです。今現在、日本に帰国中です。
http://www.chimerafilms.co.uk/children.html
midori@dircon.co.uk

4月5日のインディペンデント紙に掲載されたジョン・ピルジャーの原稿を配信
します。英文のままでお送りしようと思っていたら、もう和訳がネット上にあが
りました。早い!
もっと詳しくは益岡 賢さんのウェブサイトにアクセスしてください。
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/

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我々は見過ぎ、知り過ぎた:それは我々にとって最上の防衛である
ジョン・ピルジャー
益岡賢 訳 2003年4月8日

今や我々は、イラク侵略を巡る「禁じられた真実」を知っている。幼い娘の体を
抱きしめている父親。二人の服は、その娘が流す血でびしょぬれになっている。
手を伸ばして戦車を追いかけている、黒い服を着た女性。家族7人全員が殺され
て。ある米軍海兵隊兵士は、軍服を着たイラク人の横に立っていたというだけで、
女性を殺害した。「申し訳ない」、「だけどあの女は邪魔だてしていたんだ」。

ジョージ・ブッシュとトニー・ブレアにとって、こうした事実を尊敬できること
に見せかけるのは、容易ではないだろう。何百万人という人々が、事実を知り過
ぎている。

犯罪は、あまりに明らかである。41年にわたり労働党議員をやってきた英国下
院議長のタム・ダリェルは、トニー・ブレア首相は戦争犯罪者であり、ハーグに
送られなくてはならないと述べた。彼は、真剣だった。ブレアとブッシュに対し
て暫定的な告発が成立するのは、疑いない。

1946年、ニュルンベルク裁判で、ドイツが主張した、隣国に対する先制攻撃
は「必要」だったという主張は却下された。判決は、「侵略戦争を始めることは、
ただの国際犯罪ではない。すべての悪をその内部に蓄積しているという点におい
て、他の戦争犯罪とは区別される至高の国際犯罪である」と述べている。

パレスチナ人作家のガダ・カーミは、これに次のような言葉を付け加える。「イ
ラクに対する西洋の政策のあらゆる側面に刷り込まれた根深いそして無意識の人
種差別主義」。サダム・フセインが「彼以前の多くの中でも残虐であるとはいえ、
小さな田舎の首長から、理不尽なまでに悪魔化された」のも、この人種差別主義
によるものであると、彼女は述べる。

植民地大臣だったウィンストン・チャーチルにとって、イラク人は、他のあらゆ
るアラブ人と同様、「ニガー」であり、毒ガスを使ってもよい相手であった。彼
にとってこれらの人々は「非=人」であった。そして、現在も、英米にとって、
そのままである。

先週木曜日のバグダッド近くでの80名もの村人たちの殺害、子供たちの殺害、
「邪魔だてした女」の殺害、こうした殺害は、もしも、ロンドンや他の国々の首
都や各地で何百万人もの人々が反対の声をあげ、若い人々が学校で授業を拒否し
ていなかったら、大量生産されていたかも知れない。反対の声をあげた人々は、
無数の人々の命を救っているかも知れない。

アメリカのベトナム侵略が、「汚い東洋人」を殺しても別に処罰など受ける必要
はない、という人種差別主義に加速されていたように、現在行われているイラク
に対する残虐行為も、同じ土壌から生まれている。それを疑う人々は、ユースに
目を向けて、ダブル・スタンダードを確認してみると良い。イラクの戦車が英国
に侵攻し、イラク軍がバーミンガムを包囲していると想像してみよう。馬鹿げて
いるだろうか。むろん、そんなことは起きていない[これ自体、どちらが侵略者
で世界平和の脅威であるかを示している]。けれども、まさに英国軍がバスラに
対して行っているのは、それなのだ。

バーミンガムより大きな都市バスラ、ここの住民−その40%は子供たちである
−に対して、ミサイルを打ち込み、クラスター爆弾を投下しているのは英軍なの
である。さらに、「我々の兵士たち」は、1週間にわたって統制しているバスラ
とウムカスルの人々に水の提供を拒否している。アルジャジーラに対してブレア
が激怒するのは不思議ではない。アルジャジーラは、こうした事実を暴き、そし
て、バスラの人々が、「解放」をきっかけに蜂起しているという嘘を暴いたのだ
から。

2001年9月11日[米国にハイジャック機がつっこんだ日]以来、「我々の」
プロパガンダと語られることのない人種差別主義は、知性と道徳に対する帝国的
なねじ曲げを要求してきた。イラクの人々は、自分たちの郷土を守るために勇敢
に戦っているのではなく、攻撃しては撤退するという戦略を用いている「臆病な」
人間モドキであるとされる。巨大な武力を持った敵に対して、他にどんな選択肢
があるというのだろう。

イラクの人々の勇気を矮小化し、その人間性を蹂躙するこうした行為は、アフガ
ニスタンの村々で何千人もの人々を爆殺する行為と同様、我々に、道徳的問題を
突きつける。日本に爆撃を意図的に投下したという最大のテロ行為に対する西洋
の反応と同じくらい深く。原爆投下以来、我々は進歩したのだろうか。2003
年に入った今日でもなお、価値があるのは、「我々」の命だけ、というのだろう
か。

米英による、弱い防衛力を持たない国に対するこうした侵略は、米国が武力によ
り支配する世界の姿を見せつけている。価値のある犠牲者と価値のない犠牲者の
分割を米国が決め、そして、あらゆる主要な化石燃料に対するゲートウェイとし
て米軍基地を維持しながら。

今後のリストも予想できる。イスラエルの要望が通るならば、次はイランという
ことになろう。そして、キューバ、リビア、シリア。中国でさえ、注意したほう
がよい。朝鮮民主主義人民共和国は、すぐには米国の標的とはならないだろう。

というのも、核戦争の脅威が有効だからである。皮肉なことに、もしイラクが核
兵器を維持していたならば、今回の侵略は起きなかっただろう。これは、ブッシ
ュ・ブレア両政権と対立する政府への教訓である。「速やかに、核武装せよ」。

最も隠されている真実は、あからさまに軍事主義的な英国政府と、それが仕える
荒れ狂う超大国とが、我々の安全にとって、真の敵であるという事実である。多
くの世論調査の中で、最も興味深いのは、米国タイム誌が欧州全域の25万人を
対象に行ったもので、質問は「2003年に世界平和に対する最大の脅威である
国はどこか」というものである。イラク、北朝鮮、米国からいずれかを選ぶよう
になっていた。イラクを選んだのは8%、北朝鮮は9%、米国を選んだのは83
%に上る。そして、世界の人々の目には、今や、英国は、その米国の、暴力的な
付属物と見なされている[日本は金魚のフンといった感じでしょうか]。

このことをはじめとする諸事実を我々が理解できないとすると、それはひとえに、
プロパガンダの成功と、腐敗したジャーナリズムのためである。ルパート・マー
ドックは、非常に率直だった。ブッシュとブレアを「英雄」と讃えるマードック
は、「イラクでは付随的被害が発生するだろう。そして、野蛮でありたいならば、
今だ」。彼が所有する175紙は、何らかのかたちで、すべてこの邪悪なメッセ
ージを掲載した。彼が所有する米国のTVネットワークも。木曜日にロケット弾
で殺害された80名の村人は、彼が述べた「緊急性」の証明である。他の諸国の
さらなる犠牲者も、同じ運命を待っている。

自らを、真実を告げる名誉ある立場にあると見なしているジャーナリストは、現
在、難しい選択に直面している。安保理のメンバーを米国政府関係者が脅迫して
いることを暴く文書をリークしたとされる、チェルテナムのGCHQスパイ・セ
ンターの若い女性が迫られたと同様の、そして、ニュルンベルクの判決に刻まれ
た、民間人を殺す犯罪戦争に参加することを拒否する権利を行使したために、軍
事法廷に直面している2名の英国兵士と同様の。

「軍属」でない、そして我々の言葉自体をも蝕むプロパガンダに深く悩みジャー
ナリストたち、そして、ジェームズ・キャメロンが述べたように、「歴史の最初
の草稿を執筆する」ジャーナリストたちにも、同じような勇気が求められている。

「同盟国」により殺された、ITN[英国の独立TVネットワーク]の勇敢なテ
リー・ロイドは、このことを示している。今や、脅迫は、さらに巧妙である。た
とえば、英国の防衛相ジオフ・フーンが述べているように。「ジャーナリストた
ちを[埋め込む:軍属にする]理由の一つは」、「[テリー・ロイドが]軍組織
の一部ではなかったためにITNのスタッフ[ロイド]に起きたような事件をま
さに回避するためなのだ。軍組織に所属していない状況で、すべてのジャーナリ
ストの世話をするわけにはいかない・・・それゆえ、ジャーナリストを我々の軍
隊の保護下に置くことは、ジャーナリズムにとっても好ましい。そして、ニュー
スを見る人々にとっても好ましい」。

「保護」商売の利点を説明するマフィアのボスのように、フーンは次のように言
っているのである。言われたとおりにしろ、さもないと、悪い結果がやってくる。
実際、フーンのワシントンにおけるボス、ドナルド・ラムズフェルドは、しばし
ば、シカゴ・マフィアのボス、アル・カポネの言葉を引用している。最もお気に
入りなのは、次のようなものである。「優しい言葉と拳銃により、優しい言葉だ
けよりも、もっと得るものは大きい」。

我々すべてに対するこの脅威にどのように向き合うべきだろうか。その答えは、
私たち自身の力を理解するところにあると、私は信じている。先日、ニューヨー
ク・タイムズ紙に、パトリック・テイラーが、聡明な言葉を書いていた。アメリ
カは、今、「不屈の反対者」たる人々に直面している。我々は、二つのスーパー
パワーからなる新たな二極世界に突入している。一つは、ブッシュやブレアから
なるギャングたちであり、もう一つは、世界の意見である。ついに動き始め、意
識が日毎に高まる、人々の真の力である。詩人のシェリーは、これと似たような
時代に、「まどろみのあとで、獅子のように立ち上がれ」と説いていたはずだ。

(OPEN-J BOOMERANG 32 より)


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